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CRE戦略の真価

2010.04.21

著者: デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 立石綾子、二條優介

1.企業における「CRE戦略」の浸透状況

2008年3月に国土交通省より「CRE戦略を実践するための「ガイドライン(案)」及び「手引き(案)」が公表されて以来、各種セミナー、書籍、雑誌等を通じてCRE(Corporate Real Estate:企業不動産)という言葉が徐々に企業へ認知されている。
また、CRE施策の一つである“入居不動産の見直しによる賃料削減 (安価な物件への移転や拠点集約化による賃借面積減)”は、景気低迷によるコストダウン圧力が高まる中で、各社において定着化しつつある手法といってもよいだろう。
このように、景気後退局面においてそのコストダウン効果が注目されているCRE戦略であるが、「CRE戦略を実践するための「ガイドライン(案)」及び「手引き(案)」によれば、CRE戦略とは、「企業不動産について、「企業価値向上」の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方」と定義されており、コストと資産価値の二つの側面からアプローチすべきものとされている。

図表1 CRE戦略の定義/特徴とアプローチ

CRE戦略の定義/特徴とアプローチ

出所:「CRE戦略を実践するためガイドライン」(CRE研究会:合理的なCRE戦略の推進に関する研究会)

したがって、前述の“入居不動産の見直しによる賃料削減 “はコスト面からのアプローチに基づいたCRE戦略における施策の一つにすぎない。
その即効性に目を奪われ、「CRE戦略=コストダウン戦略」という矮小な理解が広まり、CRE戦略の真価を享受できる機会を見失ってしまうことは、CREを取り巻くあらゆるステークホルダーにとっては避けたい事態である。

2.コストダウンアプローチから抜け出せない理由

では、何故、コスト側面からのアプローチばかりに注目が集まるのであろうか。
勿論、経済状況の悪化という要因も大きいだろうが、我々は、企業経営者がCREと経営戦略の関係性を解きほぐし切れていないことが原因と考えている。
現状のCRE戦略導入プロジェクトに関してよく耳にするのは、「プロジェクト担当は管財部門である」、「プロジェクトの内容は、現状のCRE棚卸しから始めて、財務分析を行い、個別不動産に対する売却や借換え等の施策につなげる」、「最初に行うべき“経営戦略の理解とCRE戦略の立案”は形式的である」ということである。
すなわち、企業経営者は、CRE戦略の立案に殆ど関わることがなく管財部門へ任せきりになってしまっており、CRE戦略が自社の経営戦略においてどのような位置づけにあり、どのような効果があるのかを把握できていない状況にあると考えられる。
管財部門を中心に進めることで確かに一定のコスト削減は実現されるだろうが、「経営戦略に組み込まれた形でCRE戦略を策定し、事業運営における経営資源としてのCREを最大活用することで、企業価値を最大化させる」といったCRE戦略のコンセプトには反しており、本来期待すべき企業価値向上効果は限定的にならざるを得ない。
なお、経営戦略とCREの関係性については、国土交通省より公開された「CRE戦略を実践するための「ガイドライン」及び「手引き」で述べられているため、そちらをご参照いただきたい。

3.真のCRE戦略実現に向けたアプローチ

賃貸等不動産の時価開示、資産除去債務、さらにはIFRS/国際財務報告基準(国際会計基準)といった不動産時価会計の潮流を迎えている中において、前述のようなCRE戦略への取り組みでは企業が直面する課題への対応としては不十分である。
そこで我々は、グループ経営戦略という企業の最上位戦略からトップダウンアプローチでCREの活用方針を定め、実行可能な施策へ落とし込んでいく「グループCRE戦略」を推奨する。
これにより、企業はグループ全体における経営資源としてのCREを最大活用できるようになるとともに、新たな不動産関連制度(会計制度や法制度等)へのグループとしての対応力も強化され、結果としてより大きな企業価値向上効果が期待できる。

図表2 グループCRE戦略とこれまでのCRE戦略の違い

グループCRE戦略とこれまでのCRE戦略の違い

「グループCRE戦略」の導入にあたっては、一般的に基本構想策定、設計、導入・定着化の3段階からなるプロジェクトを実施する。
CRE戦略の基本構想を検討、策定する段階においては、「経営戦略とCREの関係性を明らかにする」ことを念頭におき、現状把握、CRE最大活用に向けた課題の抽出を経て、実行計画へ落とし込む。トーマツでは、「グループCRE配分方針マップ」や「グループCRE戦略マップ」等のツールを用いた効果的/効率的なCRE戦略の策定を支援している。

図表3 「グループCRE配分方針マップ」のイメージ

「グループCRE配分方針マップ」のイメージ

図表4 「CRE戦略マップ」のイメージ

「CRE戦略マップ」のイメージ

その後、策定した基本構想に基づいて、設計および導入・定着化を進めていく中では、CRE活用方針に基づく施策の具体化及び実行と併せて、CREに関する業務体制を構築する。
グループCRE戦略の実行段階においては、不動産は個別性の高い資産であることから、必要施策としての売買や賃貸等の取引が思うように進まないこともままあるため、各種施策の実行状況をモニタリングし、必要に応じて改善を図っていくことが重要となる。
この仕組みを構築する上では、グループ全体のCREを多角的な視点で管理する責任部門を設置し、各社各部門に分散しているCRE関連情報を集約していくことが必要となる。
このように、グループCRE戦略を実際に進めていくにあたっては、組織、PDCAサイクル、システムといったインフラ面を整備することが肝要である。

図表5 グループCRE戦略を支えるインフラと検討すべき事項の例

グループCRE戦略を支えるインフラと検討すべき事項の例

以上が、我々トーマツの考えるCRE戦略実現に向けたアプローチの紹介である。
企業経営者ならびに不動産部門の皆様が経営戦略と密接に関連したCRE戦略を策定される上での一つの参考になれば幸いである。


※本文中の意見に関わる部分は私見である。

以上

(参照)CRE戦略における保有不動産の有効活用について ~開発におけるフィージビリティスタディの考え方~

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