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2010.03.08 Thought Leadership テレビとインターネットがついに融合

著者: デロイトリサーチ編著/監訳:トーマツTMTインダストリーグループ 桃井 智徳 池末成明/翻訳:高橋みはる/訳注:池末成明

テレビとインターネットはついに融合し、ウェブコンテンツとテレビ番組を融合するプラットフォームが誕生する。ウェブ・コンテンツとテレビ番組の両方をテレビ画面で見せる方法だけでなく、番組はテレビで、コンテンツは視聴者が望む端末で見せることも必要だ。このとき番組とコンテンツを同時に見せることが成功のカギである。

このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した『Media Predictions 2010』から興味深いテーマを抜粋して翻訳した上で、加筆修正したものである。このトピックスは主に欧米市場の調査にもとづくものである。なお、訳注は訳注者の私見である。

ネット対応の次世代型テレビの出現

ウェブ上のコンテンツをテレビに映すモデルは、古くから存在していたが、進化もせず、普及もしていなかった。パソコンのコンテンツはテレビでは映りが悪いからだ。またキーボードとマウスを使って操作することを前提に開発されたコンテンツを、リモコンで操作するのは難しい。
ところが2010年、ウェブ、テレビ、セットトップボックス(STB)の3つの接点すべてでテレビとネットの融合が始まった。
セットトップボックスは、テレビ画面でインターネット利用を可能にし、テレビ画面での見逃し視聴サービスや、リモートソフトアップデートなど、新しい価値を生み出すだろう。

訳注:セットトップボックス(STB)とは、CATVで使われているテレビとCATVをつなぐチューナーのような装置である。パーソナルビデオレコーダ(PVR:Personal video recorder)とは映像をハードディスクに記録するビデオレコーダーのことをいう。デジタルビデオレコーダー(digital video recorder)ともいう。

また次世代型テレビは、パーソナルビデオレコーダを内蔵しているが、ブロードバンド接続機能も組み込んでおり、テレビウィジェットをプレインストールしている。この結果、テレビからもウェブサイトに簡単にアクセスし操作ができるようになった。視聴者は「テレビウィジェット」を使ってテレビで、天気予報、音声ファイルや動画ファイルのストリーミングなど多種多様な機能を楽しむことができるというわけだ。デロイトの予測では、パソコン向けのウェブ画面をただまねて表示させるだけのテレビが、最も成功する可能性が高い。
しかしインターネットを組み込んだ次世代テレビは、期待したほど普及せず、当面の間は限れられた視聴者しか取り込めないだろう。

訳注:インターネットを組み込んだ次世代テレビのように複数の機能を一体化してサービスを販売することをバンドルという。一種の抱き合わせ販売であるバンドルは典型的な垂直統合型のビジネスモデルであり、市場の初期段階では有効な方法であると言われている。にもかかわらずデロイトでは、このモデルの初期段階での成功に懐疑的である理由が、次に明かされる。

ネット対応の次世代型テレビが普及しない理由

その最大の理由は、テレビの買い替えサイクルが通常10年であり、今すぐに新しいネット内蔵のテレビを購入する人は少ないからだ。視聴者は、視聴者が今持っているテレビでテレビ番組を、視聴者が今愛用している端末でネットのコンテンツをテレビを見ながら同時に楽しんでいる。たとえば視聴者はテレビ番組について友達とネットでチャットしたり、選手の過去の記録をチェックしたりするわけだ。

訳注:ここでの論点は、テレビとネットを番組表にあわせて同時に配信することにある。番組表にあわせた番組の配信をリニア型サービスというが、このトピックスでは「テレビ局はインターネットでも番組と同時にリニア型の配信してみてはどうか」と提案している。今後、テレビガイドを発展させたリニア型サービスのポータルサイトも面白いサイトになるかもしれない。

番組を見た視聴者は、続けて番組の感想や、楽しんだ映画のレビューを読んだりもするだろう。また今流行しているドラマの情報を得たりするだろう。

訳注:視聴者がどのように番組とコンテンツを組み合わせて楽しむか調査するためにはテレビ局はどう動くべきだろうか。トピックスは中核の議論へと進む。

配信プラットフォームの融合

こうした視聴者の動向を踏まえ、また視聴者の動向を把握するために、2010年は、二大メディアであるテレビとウェブの配信プラットフォームを融合する動きが活発化するだろう。ただしウェブとテレビを融合する方法は、既存のテレビとインターネット・ブラウザ付きの機器の組み合わせを中心となるだろう。この結果、年末までにブロードバンド接続が可能な家庭の約3割が、インターネットに接続できる端末をつかって、テレビ番組を見ながら、別の端末画面を使ってインタラクティブなやりとりを行うだろう。ブラウザ付きの機器とは、例えばWiFiが繋がるノートパソコン、ネットブック、スマートフォン、MP4プレーヤーそして何千万台も市場に普及しているポータブルゲーム機などだ。

訳注:デロイトはネットを内蔵した次世代テレビの未来を否定しているのではなく、その離陸を円滑に進めるために、まず視聴者に対して、別の端末を使って、オープンな環境でテレビ番組を見ながら、番組と連動したネットコンテンツの配信が先行すると予測している。プラットフォームがマーケティングの要であることからプラットフォームを支配する者が市場を支配できる。したがって、ネットを支配する業界がテレビ業界より優勢になる前に、テレビ業界はプラットフォームを構築するべきなのだ。

Bottom line デロイトの提言

視聴者と広告主のニーズ把握が重要

2010年末までに顕著に現れる現象は、テレビの受動的な性質とウェブのインタラクティブな性質のブレンドだ。この現象を引き起こす原動力となるのは視聴者であり、コンテンツ作成者であり、広告主である。

訳注:テレビもまたネットワーク外部性が効く産業である。ネットワーク外部性とはネットワークへの参加者が多いほど価値が高くなることをいう。テレビの場合、広告主と視聴者の両面に価値を提供している。この2面性がネットワーク外部性を生み出していることが、最近の経済学の研究でわかってきた。日本の放送業界の本格的な経済学的研究は、始まったばかりであるが興味深い内容が多い。放送業界の業界再編が広告料に及ぼす影響など優れた研究も生まれている。2面性モデルはネットの世界にも存在していることがわかっており、今後の経済学的な知見の蓄積が急務である。一方衛星テレビは、ネットの世界よりもプラットフォームやガイドラインに関連した法の整備が進んでいる。この事例に限らず、法の世界では放送がネットの世界で貢献できることも多いように思われる。

広告主と視聴者を直接つなぐために

ウェブとテレビを同時に使用することが増えることによって最もその恩恵を得るのは広告だ。ウェブとテレビを一緒に使っている場合、それぞれを別々に使うよりも、広告主のブランドに対する好感度が47%も上がるという調査もある。2010年の世界のテレビ広告市場規模予測は約1800億ドルであり、ネット広告は約630億ドルである。テレビCMが視聴者をウェブサイトへとリアルタイムに導いて、CMで放送された商品を番組が再開されるまでに購入することが可能となる。こうしたモデルの構築もテレビ局の生き残りに有効だろう。

訳注:デロイトでは、ウェブとテレビの融合による広告モデルのアイデアを『Thought Leadership 21世紀のテレビネットワーク』というコンテンツで示唆した。今回、このトピックスでその姿を初めて明らかにしたわけである。この融合プラットフォームこそが、ネットを利用したCRM戦略を使って小売店になるべきだという主張の形であり、デロイトが10年前に予言したモデルである。なお日本では広告代理店が、こうしたモデル構築を進めることが妥当であろう。

製作者と視聴者のための演出ツールに

ウェブとテレビを同時に使うことが普及した場合、テレビ制作者はウェブを番組の演出にも活用すると面白いだろう。番組を見ている視聴者が、その場で知りたい情報を苦労せず関連するウェブサイトへ行って探せるような工夫も必要だ。用意するサイトは、パソコンのみでなく、MP4プレーヤーや、ネットブック、スマートフォンなどの幅広い機器からのアクセスに対応すべきである。またスター発掘番組では、視聴者の投票状況を視聴者自身が調べることができたり、コンテストの結果を予測できるようなシステムを提供すると臨場感が高まる演出ができるだろう。スポーツ番組ではリアルタイムで選手の記録が見られるサイトの提供を行うとよい。ドキュメンタリー番組やクラシック音楽では補足情報を提供するとよいだろう。

訳注:日本のある動画サイトでは、利用者がその動画について書き込んだコメントを読むことができる。討論会を実況中継しながらtwitterで視聴者や討論会の参加者がつぶやくイベントも見かける。このような方法も、ウェブとテレビを同時に使う方法では、新しい演出方法として使えるだろう。こうした演出方法は、視聴者の臨場感を煽る古典的な手法も有効である。これはメディア学や政治学で心配されている現象であるため、ネットとテレビの融合は同時にメディア倫理を改めて問われる課題も出てくることだろう。ある大学のインターネット教育では、ネットで授業に学生にライブな臨場感を与えるために、ライブな授業を受講している学生の反応をネットでも表現できるよう工夫している。今後のテレビのキラーコンテンツは教育コンテンツだと言われることもあるが、この大学のインターネット教育の事例は参考になるかもしれない。例えば著名な大学と連携した単位のとれる教育コンテンツの制作支援と放送も今後のテレビ番組の新しい姿かもしれない。

以上

※本稿は、『Media Predictions 2010』より抜粋したものです。タイトルをクリックすると、原文掲載ページが開きます。

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