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2010.05.17 Thought Leadership 情報通信サービスの契約内容の変化

著者: デロイトリサーチ編著/監訳:トーマツTMTインダストリーグループ 池末成明

2010年。通信ソリューションの需要は堅調だ。しかし経済の先行きが不透明であるために、法人顧客はプロバイダーにサービス料削減を求めるだろう。また、垂直分離政策やオープン化の進展で、法人顧客は、通信プラットフォームやプロバイダに対するこだわりが薄れており、契約を自由に乗り換えるようにするため、新規契約の期間を最短で3年にまで短縮化するだろう。またプロバイダーも法人顧客も、利用度に応じたサービス料の支払う方法、つまり従量制課金に変更することも検討するだろう。

このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した『Telecommunications Predictions 2010』から、情報通信業界の契約の新しい在り方に関する予測と提言を意訳したものである。また、このトピックスは主に欧米市場の調査にもとづくものである。なお、訳注は翻訳者の私見である。

定額制の長期契約の時代

過去、通信やハイテク関連の調達では、利用度に応じた従量制の請求ではなく、定額制の長期契約がベスト・プラクティスであると長く信じられていた。こうした長期契約は10年という契約期間も珍しくなかった。お互いを長期に拘束する方法は通常、双方の当事者にメリットがなければならない。長期契約は、プロバイダーにとっては安定した利益が得られ、顧客にとってはより高い質とより低いコストが実現できるというメリットがある。そして、双方が互いにビジネスパートナーとして緊密な提携関係を構築できる。2008年に締結された主な長期ハイテク・通信契約の取扱高は171億ドルにも及ぶ。

変革の時代の契約の問題

経済が安定した時期でも、不測の事態になんでも対応できる契約を締結する実務は、難しい。たとえば法人顧客の所在地やプロバイダーのアクセス・ポイント(POP)の変更、法人顧客の各事業者における従業員の異動や従業員数の増減、法人顧客とプロバイダーの取締役の異動に対応して、契約当事者双方はどのように対応すべきか契約書にどのように盛り込んだら良いのだろうか。また、仮想化デスクトップインフラストラクチャやクラウド・コンピューティング、ビデオ会議など、新たなワークスタイルにつながる技術革新に柔軟に対応できるようにするためには、どのような契約とすれば良いのだろうか。原油価格の変動による電力コストの上昇、二酸化炭素の排出権取引の発生といった外因性の衝撃にも耐えるようにするためには、どうすればよいだろうか。

長期契約から短期契約へ

こうした激しい変革期において、世界経済を含む外部環境が一定の安定感を取り戻すまでは、長期の期間での契約の合意は難しく、長期契約は避けるべきなのだ。プロバイダーは、キャッシュフロー改善のために必要と判断すれば、地域や部門の廃止または縮小に踏み切るかもしれない。プロバイダーは、損得勘定を計算して上で、契約不履行であることを承知した上で、ときには一方的な契約破棄すらも断行するかもしれない。全く逆のことは法人顧客にも言える。一部の法人顧客は、事業を大幅に縮小するかもしれない。買収の荒波にまきこまれる法人顧客もいるだろう。プロバイダーも法人顧客も景気後退への対応に追われるため、長期契約の締結はリスクが高いのだ。

コスト削減

今後、多数の法人顧客が、コスト削減をめざして、サービス料の削減をプロバイダに求めるだろう。またはサービス全体の見直して、サービスレベルの質を落とすことを検討し、契約条項の大幅な変更を求めるだろう。一方プロバイダーは、利用料を値上げを法人顧客に求め、またはサービスレベルを落とそうとするだろう。法人顧客もプロバイダーも利益率の引き上げを図りたいからだ。ところが技術の汎用化とコモディティ化が進めば、プロバイダーの設備投資コストが下がる。法人顧客は、新しいプロバイダーとの契約の方が料金も安くコストが下がる。こうして法人顧客のプロバイダーの変更を進め、結果的に契約を破棄するだろう。また新規の契約については、契約破棄に要した面倒な手続を避けるため、契約期間の短縮や契約をいつでも破棄できるように工夫するだろう。

定額制から従量制へ

また法人顧客の中には料金制度を見直し、定額制課金から従量制課金(pay-per-use)を採用するだろう。定額制は期間の制限がある場合は多いが、従量制課金は期間制限がなく、いつでも止めることができる場合が多い。このことも契約期間の短縮を促進する。

Bottom line デロイトの提言

訴訟を回避するために短期契約に変更する

契約の解約はプロバイダーにも顧客にも不利益をもたらす。大規模プロジェクトをめぐる訴訟のコストは数億ドルにも達し、決着までに何年もかかる場合がある。両当事者とも、不透明な経済情勢によって生じる緊張状態や混乱に耐えうる契約を締結すべきだ。今後、契約は、柔軟性をもたせるために、期間を短縮するか、包括的なサービスを分割して、それぞれ別の短期契約として機能するよう工夫するとよいだろう。

リスクの低い契約のコツ

リスクの低い契約内容にするには現実的な視点が必要だ。契約は、プロバイダーが実際に提供できるサービスを対象にし、良好な事業関係を構築できるように十分な「のりしろ」を作っておく必要がある。一方だけに有利な契約は、長い目で見て双方の当事者にメリットにはならない。どんな契約でも、プロバイダーは利益率重視、法人顧客はコスト削減という基本的な対立軸がある。プロバイダーも法人顧客もそれぞれの目標達成に役立つ手段を持っているが、それらは目先のメリットしか生み出さない。たとえばプロバイダーは法人顧客の担当チームを交換できるため、入札や契約の初期、契約更新時にだけ第一級のチームを配置できる。一方、法人顧客は、追加サービスやより高品質なサービスの要求が満たされない場合は再交渉を迫ることができる。しかし、どちらのやり方も相手方の怒りを買い、パートナーシップに根ざしたはずの関係が不信で揺らぐ事態になりかねない。また契約の両当事者は、契約が金額に見合うだけの価値があるかどうか定量化する必要がある。定量的な確証がない場合、いずれかの契約当事者に契約のメリットはないので、契約を締結したとしても、結局、契約を破棄することになる。また価値が定量可能であって場合でも、両当事者に十分な価値を計測するシステムがなければ、契約当事者間の緊張は高まる。

汎用に耐える契約よりは専用に耐える契約を

今後、利益率の改善をめざすプロバイダーは、規模より専門性を重視するべきだ。すべてを手がけるグローバル・ソリューションの大手になれば大きな売上が見込めるかもしれない。しかし平均的なプロバイダの場合、国境を越えたプロジェクトやサードパーティ・プロバイダー管理が負担になり、利益は損なわれる可能性がある。法人顧客は、専門的なプロバイダーとは、アウトソーシングを経由するよりも、直接契約した方が最善のソリューションを得やすい。

以上

※本稿は、『Telecommunications Predictions 2010』より抜粋したものです。タイトルをクリックすると、原文掲載ページが開きます。

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