2010.03.01 Thought Leadership クラウドとスマートフォン |
変身。スマートフォンが検索フォンに
モバイル検索の覇権争いが始まる。スマートフォンに搭載されるモバイル検索とその利益分配の構造がユビキタス時代のビジネスと生活を改革する。
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した『Telecommunications Predictions 2010』から、通信業界のスマートフォンに関する予測と提言を翻訳したものである。また、このトピックスは主に欧米市場の調査にもとづくものである。なお、訳注は翻訳者の私見である。
競争が加熱するモバイル検索市場
2010年の通信業界において、モバイル検索は、天下分け目の年となる。モバイル検索の売上高は10億~20億ドル程度にとどまる見通しであることから、アナリストやメディアの関心は低い。しかしモバイル検索のプロバイダは、モバイル検索から得られる売上の何倍もの投資を行っており、投資リスクも高いのだ。モバイル検索市場での主導権をめぐる戦いは激しくなり、研究開発への投資も過熱している。この結果、既存のモバイル検索エンジン・プラットフォームはさらに機能性と性能を高め、また新しいモバイル検索エンジンも台頭するにちがいない。またクラウドやモバイルプラットフォームを販売する際の協賛企業や販売経路として、検索エンジンの開発会社とパートナーシップ契約が結ばれる例も増えるだろう。
モバイル検索はスマートフォンのキラーアプリケーション
モバイル検索機能は、長く利用者の不満がくすぶっていたが、ここ最近になって大きく性能改善し、その成長も加速している。2008年の米国モバイル市場では、モバイル検索機能の利用率はわずか7%だったが、この原稿を書いている2009年の日本ではすでに携帯電話利用者の40%が毎日モバイル検索を利用している。また2010年末までに、モバイル検索機能は、音声通話、メッセージング、スケジュール管理、サイトの閲覧用のソフトウェアとともに、スマートフォンで最もよく利用されるアプリケーションの一角を占めるとみられる。
同じ年の2009年、世界のスマートフォンの販売台数は1億8,000万台と初めて携帯用パソコンの台数を上回り、台数ベースでポータブル・コンピューティング・デバイスの首位に立った。2011年までにはスマートフォンの出荷台数は4億台に達し、パソコン全体(ノートパソコン、デスクトップパソコンの合計)の販売台数を超える見通しである。そうなれば、パソコン・メーカーはスマートフォンへの多角化を加速せざるを得ない。
モバイル検索市場が創造する新市場
2012年までにスマートフォンの出荷台数は5億台に達し、モバイル検索と連動した広告市場は72億ドルのモバイル広告市場の大部分を占めることになるだろう。
2010年末までに、モバイル検索はパソコン検索を凌駕するかもしれない。たとえば、モバイル検索なら、夕食をとる場所や贈り物を買う場所を探すだけでなく、内蔵のGPSナビゲーションを使って曲がり角や行き方を細かく説明し、その場所まで案内してくれる。この機能は、広告主やこのようなサービスを提供するプロバイダにとって大きな利益をもたらすにちがいない。
モバイル検索をパソコン検索の代替と思うな
モバイル検索は、パソコンで行う検索を、パソコンが使えないときの次善の策として利用されるため新しい検索ツールではないと意見が主流だろう。確かに利用者は次善の策という意識でモバイル検索を使っているのかもしれない。しかし、ほとんどの検索は衝動的、突発的に行うものであり、スマートフォンにモバイル検索機能があれば、初期の携帯電話が音声通話件数を増やしていったように、全体の検索件数も増えるだろう。デロイトの予測によれば、パソコンとモバイル両方のインターネット接続機器を持つ利用者は、パソコンのみの利用者より10%多く検索するだろう。
Bottom line デロイトの提言
スマートフォンの普及が促進するモバイル検索の覇権争い
2010年、世界の携帯電話市場に占めるスマートフォンのシェアは拡大し、金額ベース、数量ベースともに増加する。2010年のスマートフォンをめぐって、どの機器がいいか、どのデバイスメーカーやオペレーティング・プラットフォームが優れているかに話題が集中しそうだ。
こうしたスマートフォンの競争の中、検索プロバイダ間の主導権争いは2010年以降、激化しそうな気配だ。2010年中に検索モバイル市場の競争に決着がつかず、いづれ数社が寡占する市場になる。しかし、3年前後で有力企業と下位企業との間に大きな差が生じだろう。
検索が生む黄金をどう山分けするのか
したがって検索が、将来のモバイル・プラットフォームの中心的機能になるとみられることから、検索から得られる収益をどう分配するかがビジネスモデルを成功させるカギとなる。その結果を大きく左右するのは携帯電話メーカーと通信事業者である。2010年は、その両者が検索プラットフォームから利益を得られるだろうが、今後の動向しだいでは長期的にはコストが高くつくので注意が必要だ。このため携帯電話メーカーも通信事業者も、どのモバイル検索エンジンの提供者と組むべきか迅速かつ慎重な検討が必要だ。
モバイル検索をめぐる主導権争いは、販売奨励金の分配モデルとも無縁ではない。通信事業者と検索エンジン・プラットフォームの両者が、スマートフォンの販売奨励金を共同して提供するとよいだろう。検索に奨励金をつけ、顧客が特定モデルを好んで購入するよう誘導してもよいだろう。
訳注:このモデルは、携帯事業だけでなく、物販やコンテンツの流通革命や少額取引の決済革命をおこす引き金になるかもしれない。すなわち通販の発注や検索でポイントを付与したり、そのポイントの使いまわしができるモバイルカードに変容するかもしれないのだ。
モバイル検索の成功要因はユーザーインタフェース
ユーザー側からみると、差別化の決定打はユーザー・インターフェースだ。スマートフォンは、家庭やオフィス、旅行先やドライブ、電車の中やウォーキングの最中といったさまざまな環境下で使用されるが、モバイル検索エンジン開発会社にとっては、それが困難な挑戦であると同時にビジネス・チャンスでもある。開発会社は、それぞれの環境下で使えるユーザー・インターフェースを提供する必要がある。例えば、車を運転中の人には音声認識で、歩行中の人には画像や写真を選んで検索ができる画像検索という様に、さまざまな技術を融合させることが重要である。画面を直接タッチする既存技術はさらに改良を重ねていくだろう。
訳注:たとえば、瞬きや頭や手を軽く振るだけで反応するような機能が考えられる。
モバイル検索をよりユーザーフレンドリに使いやすく
モバイル検索プラットフォームの開発会社は、不安定な受信地域や車や列車で移動している携帯電話の利用者の速度といったモバイル体験の特性に見合った検索のあり方を検討しなければならない。現在、携帯メールでは受信可能になったときユーザのメールを送信できる仕組みがある。同様にユーザーが検索を保存し、受信地域に戻った時点で実行すれば検索結果を得られるという機能も考えられる。
またモバイル検索を他のプラットフォーム、特にパソコン上で行う検索と一体化させることが必要だ。携帯端末上で保存した検索や「お気に入りサイト」は、ユーザーのパソコンの検索環境でも連動してアクセスできるようにすべきだ。
さまざまなアプリケーションに急速に浸透しているため、自分自身をユーザーに探し出してもらう必要がある。このため検索はモバイルのアプリケーションストアにとってもますます重要な存在になりそうだ。検索エンジンの開発会社は、アプリケーションストア間に加え、特定のアプリケーションストア内で動作する検索エンジン・プラットフォームの開発を検討するとよいだろう。こうした機能は、またモバイルクラウド内やモバイルクラウド間でも有効であろう。
以上
※本稿は、『Telecommunications Predictions 2010』より抜粋したものです。タイトルをクリックすると、原文掲載ページが開きます。
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