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2010.04.21 クラウドコンピューティングの変化の見通し 第2回 クラウドコンピューティングの推進要因と慎重要因

著者: デロイトリサーチ編著/監訳:トーマツTMTインダストリーグループ/監修:八子知礼/編集:村上秀次/翻訳:斉藤伸

このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した『Cloud computing: forecasting change』から興味深いテーマを抜粋して翻訳したものである。

クラウドコンピューティングについて、全4回に分け、その推進要因と慎重要因、成長予測、主要プレイヤーなどについて解説を行う。第2回目である本稿では、クラウドコンピューティングの推進要因と慎重要因について整理してみたい。

(ご参考)
クラウドコンピューティングの変化の見通し
 第1回 クラウドコンピューティングとは何か
 第3回 クラウドコンピューティ ングの成長予測
 第4回 クラウドコンピューティングの主要プレイヤー

クラウドの採用を推進させる要因

デロイトは、クラウド(クラウドコンピューティング)の採用をより推進させる要因について次のように紹介している。
第1に、クラウドが持つ従量課金制、マルチテナントの特性はスピーディな投資回収および先行投資を抑制することによる投資効率(ROI)の上昇をもたらすと指摘している。
たとえば、クラウドプロバイダへ広く適用範囲が移転することで、クラウド利用者からのITメンテナンス、アップグレードおよびサポートコストの分離が起こる。(例えば、アップグレードはクラウド利用者に自動的に提供され、課金も定額料金として課されるようになる)。
また、クラウド利用者は、初期投資としてハードウェアやライセンスを購入したり、オンプレミスでカスタマイズをかける代わりに、定期的に利用料を支払うように変化するとともに導入期間も短縮するなど、最小限の先行投資コストで済むようになる。
第2に、クラウドがもつ高度な仮想化、即時拡張性は、ビジネス展開の加速、より大きな柔軟性、コアコンピタンスへの注力をもたらすと指摘している。
たとえば、クラウドは、ビジネスの展開で要求される要件に対して情報システムを構築しなければならないという、しばしば存在する相互間のタイムラグを取り除き、組織的な対応の柔軟性、機敏性を保証する。
デロイトのある顧客は、2週間以内でオンデマンドの営業支援システムツールのファーストリリースを実現した。クラウドにおいて、もっとも成熟しているといわれるCRMの導入期間は、3か月未満と、オンプレミスソリューションと比較して著しく下回ることが一般的である。

クラウドの採用を慎重にさせる要因

逆に、クラウドの導入には非常に慎重な企業が多いのもひとつの特徴だ。デロイトは、クラウドの採用を慎重にさせる要因について次のように紹介している。
第1に、データセキュリティ、コンプライアンスや有用性、パフォーマンスについての懸念が根強く存在することを指摘している。
クラウドの利用に対する主な懸念は、クラウドプロバイダが提供するサービスのセキュリティ水準が社内で管理する場合のセキュリティ水準にないのではないかということだ。
社内ファイアーウォールの外にデータがあることや、他の企業とデータやアプリケーションを共有するマルチテナント構造、データの保管場所が特定しにくい仮想化技術に対して不安があるのはもっともであるともいえる。
しかしながら、その懸念に対する認識は現実と完全に一致しているとはいえない。
たとえば、アマゾンとIBMのような主要なクラウドプロバイダは、セキュリティの重要性を十分に理解し、セキュリティ管理に専用の技術的なソリューションを投入し、自らセキュリティ管理強化への試行を進めるなどして、すでにコアコンピタンスの一例を作りだしている。
このようなクラウドプロバイダの努力などにより、セキュリティに関する懸念は過去オンライン決済の事例でみられたように時間とともに消えていくことだろう。
第2に、クラウドを導入する当事者となるIT組織への影響も、クラウドを採用するにあたっての慎重要因となると指摘している。
ここ数10年の間、主なIT投資はIT組織を設置して体制整備することとハードウェアとソフトウェアの適切な設定をするためになされてきたといえる。
IT投資のスケール感と複雑さや、IT組織が成長する際に懸念される組織体制が若く、構造化されていない状況を考えると、CIOとCTOがIT組織に対して持ち得る一般的な考え方は、技術に対する知識や情報処理のパフォーマンスを集約し、企業の中での変革エージェントとして体制整備するよりも、技術の導入や業務の確立が優先されていたと言える。
一方、クラウドを導入するということは、IT組織の在り方を、システム運用やメンテナンスなどの付加価値の比較的低い業務から、ITビジョン策定、業務支援サービス提供、経営意思決定支援などへと焦点を変化させ、社内のビジネスだけでなく外部組織にもIT管理の性質を変化させていくこととなるだろう。

図 クラウド・コンピューティングの推進要因および慎重要因

クラウド・コンピューティングの推進要因および慎重要因

クラウドの今後の展開

デロイトは、上述したクラウドの推進要因と慎重要因を踏まえて、クラウドの今後の展開を次のように予測している。
クラウドはオンプレミスソリューションと比較してROI、スピード、柔軟性の観点から明確な優位性を持つ。
今後クラウドは、これらの優位性を有効に利用し、慎重要因を克服することで、広く普及していくことだろう。
一方で、上述の慎重要因を克服するにあたっては、ユーザーのセキュリティとコンプライアンスに対する信用を獲得し、必然的に起こり得るIT組織の変革に対する抵抗を乗り越え、IT産業全体の意識改革など、新しい思考と行動の様式を促進することが重要となるだろう。

以上

(ご参考)
クラウドコンピューティングの変化の見通し
 第1回 クラウドコンピューティングとは何か
 第3回 クラウドコンピューティ ングの成長予測
 第4回 クラウドコンピューティングの主要プレイヤー

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