2010.03.01 Thought Leadership 環境に優しい通信回線 |
通信業界の二酸化炭素排出量削減は、回線利用効率の向上や省電力で故障しない通信機器の設置、インフラ共有化が不可欠である。光ファイバーの普及も排出量を削減するのに貢献する。
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した『Telecommunications Predictions 2010』から、通信業界の環境問題に関する予測と提言を翻訳したものである。また、このトピックスは主に欧米市場の調査にもとづくものである。なお、訳注は翻訳者の私見である。
通信業界は二酸化炭素排出量削減に取り組む
2010年、通信回線数は引き続き増加し、二酸化炭素排出量も増加すると思われる。そこで世界の通信業界は二酸化炭素排出量の削減をさらに強化する戦略を打ち出し、回線当たりの排出量の削減を目指すだろう。
世界の通信業界は、40億人を超える加入者に1人当たり平均1.5回線を提供し、年間1億8,300万トンの二酸化炭素を排出している。これは世界全体の排出量の約0.7%に相当する。この排出量は自動車や航空業界に比べると少ないが、通信業界が二酸化炭素を大量に排出する産業であることに変わりはない。
通信業界が排出量削減する理由はコスト削減
通信事業者が排出量削減に取り組む理由は2つある。第一に、先進国ではコスト「削減」を進めるために回線の効率化を進めている。第二に加入者数が増え続けている途上国では、回線のコスト「管理」が不可欠である。いずれもコストを問題にしている点が共通している。
固定通信は成熟市場であり、モバイル・ブロードバンドのように高い成長を遂げるサービスではない。従って利益確保に向けた施策のひとつは事業効率によるコスト削減だ。大手の通信事業者にとって、二酸化炭素排出量の10%削減は経常的に数千万ドルの節減につながる。
光ファイバはグリーンな通信の切り札か
固定電話事業者は、ネットワークの長期的な省エネ戦略として次世代光ファイバー網を重視するだろう。これは30~40%の省エネにつながる見通しで、現在の銅線製の通信網と比べて事業コストを大幅に低減できる。その理由は、銅線網は常にオン状態であるのに対して、次世代光ファイバー網は電力モードの切り替えができ、必要な交換局数を減らせるうえ、温度許容度が大きいことが冷暖房をそれほど必要としないからである。ただし、通信事業者が力を入れているデータセンターの増加はその足を引っ張るだろう。データセンターの排出権の削減の問題は、別の大きな興味深いテーマである。
加えて、DSLを実現する帯域幅の伝送速度が高速化するほど、光ファイバーへの交換による潜在的な省エネ効果は高まる。これは、DSL接続の速度を速めるには、それに見合う電力消費の増加が必要になるとみられるためである。
携帯電話の基地局の省エネの方法 4Gが切り札か
携帯電話の基地局当たりの電力消費は1,400ワットに達することもあり、基地局当たりのエネルギー・コストは年間3,200ドル前後、二酸化炭素排出量は11トンと推定される。無線通信網は、事業者の電力消費全体の最大80%を占める場合もある。このため携帯電話事業者は、自社の無線通信網のコスト削減に注力するだろう。
バックアップのコストは、特に途上国ではディーゼル発電機を利用するため、二酸化炭素排出関連の比重が大きいので、燃料電池への切り替えを検討するだろう。
最新の基地局は電力消費量が最大で50%低い。また最新の基地局は信頼性も高いといわれているため、現場点検の回数を減らすことができる。このため保守要員の移動に必要な二酸化炭素の排出を削減できる。加えて新設の基地局は外部の冷却システムがなくても機能するため、電力消費とメンテナンスの諸経費を圧縮でき、物理的な設置面積も少なくて済む。空調設備がないだけでも、二酸化炭素排出量を30%減らすことが可能だ。
途上国の事業者は、公共送電網から独立したすなわちオフグリッドな基地局のエネルギー・コスト削減に重点的に取り組むだろう。オフグリッドの基地局はすでに年間7万5,000カ所ずつ、年率では30%増加している。そこでの二酸化炭素排出の第一の原因はディーゼル燃料消費であり、次いで基地局までのディーゼル燃料輸送、そしてメンテナンスのための現地訪問による排出である。事業者は各基地局のコスト削減に向け、代替電力源としての再生可能エネルギー(可能性が高いのは太陽発電と風力発電の組み合わせ)など、あらゆる選択肢を検討するとみられる。
このように新設の基地局は電力効率やコスト効率が高いため、一部の通信網を基地局の既存通信網から切り替える動きが加速するとみられる。さらに、既存基地局を取り替えようという動きの背景には、3Gの普及を待たずにいきなり4Gへのアップグレードに向かうかもしれない。
訳注:これは欧州やアジアでの話である。日本では3Gが十分に普及している。また4GとはLTE(Long Term Evolution)を指し、厳密には3.9Gである。LTEは4Gに向かう過渡期にある方式である。
ネットワーク共有も省エネの方法
携帯電話事業者は、より広範なネットワーク共有(network sharing)を検討している。事業者のネットワーク共有は、現在は主に携帯電話基地局の共有、すなわち「受動的共有(passive sharing)」と呼ばれるものが中心だ。しかし、規制面で問題がなくなれば、携帯電話事業者は「能動的共有(active sharing)」、すなわちアンテナやバックホール伝送を含む、より戦略的な要素の共有に踏み切るだろう。
訳注:アンテナの設置場所のコロケーションが我が国では重要だ。建造物の電波の受送信の良い場所をめぐる争奪戦は深刻である。バックホールの共有化は航空会社のコードシェアに似たモデルである、我が国ではMVNO協議会はキャリア同士のネットワークの共有について反対しており、その主張は日本の現状では合理的な主張だろう。しかし、環境問題という視点に立つと、インフラの共有化は避けられない流れかもしれない。政府がキャリアにコードシェアを許すならば、MVNOに何か決定的な見返りを提供すべきだろう。
Bottom line デロイトの提言
通信業界の二酸化炭素排出量は改善の余地は依然大きい
携帯端末メーカーはネットワークの効率改善に向け、今後もあらゆる方法を模索する必要がある。例えば、ネットワークは利用度が変化するにもかかわらず、常時パワーがオンになっている。大部分が夜間はアイドリング(待機)状態になっているため、夜間や利用が少ない時間帯は電源を切ることも検討すべきかもしれない。またメーカー各社は、携帯電話の電力効率を最大化するために開発した技術を、ネットワーク要素に活用できないか検討してみるべきだろう。
携帯端末メーカーは、自社製端末の二酸化炭素排出量の削減に今後とも積極的に取り組むべきである。バッテリーの充電が終われば充電器がオフになるといった新技術や、充電器の基準統一などは大きな効果が得られよう。これらの新技術を世界の携帯電話利用者の4分の1に搭載すれば、10億人の電力消費を削減できるようになる。だがスマートフォンの利用拡大はこの動きに逆行するといえる。スマートフォンは、従来の音声通話中心の電話やフィーチャーフォンより概ね画面が大きく、より電力を消費するプロセッサを搭載しているからだ。
モバイル業界は、社内の省エネ対策に加え、引き続き間接的なエネルギー消費、特に充電時に使用されるエネルギー量の削減に重点的に取り組まなければならない。
固定と携帯でのトラヒックのやりとりを検討してみるべきであろう。従量課金も省エネの方法である。固定電話、携帯電話の事業者は全体のエネルギー・コストを削減するため、固定とモバイル通信網の間で音声やデータ・トラヒックをシフトさせることのメリットを検討してみるべきである。また業界全体が従量制課金に移行すればどのように過度のネットワーク利用を抑えられるかを検討することも必要だろう。
訳注:ネットワークの中立性と絡んで、ネットワークの負担を削減する方法として、『Thought Leadership 従量制課金へ移行するモバイルキャリア』では、従量制課金への転換を論じている。
保守の改善も省エネの方法
事業者は、メンテナンス担当者の業務によって生じる二酸化炭素排出量の削減方法を検討する必要もある。信頼性の高いネットワーク技術が増えれば、現場訪問の回数も減るはずである。また、通信事業者が利用する車両の中で小型車両の比率を高めれば、合理化につながる。大部分の技術者が必要な道具やパーツだけを持参し、バンではなく小型車に乗り込んで仕事に向かう方法もある。
以上
※本稿は、『Telecommunications Predictions 2010』より抜粋したものです。タイトルをクリックすると、原文掲載ページが開きます。
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