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2010.08.04 Thought Leadership ソーシャルネットワーキングとレピュテーションリスク デロイトアメリカの調査結果より(1)

著者: デロイトリサーチ編著/監訳:トーマツTMTインダストリーグループ /翻訳 高倉裕幸、高橋みちる

従業員によるソーシャルネットワーキング上の活動は企業のレピュテーションリスクを脅かしている。その対策のひとつに、従業員のソーシャルネットワーキングの利用に関する方針とマニュアルの作成がある。しかし、企業がマニュアルを策定しても、従業員の半数は、マニュアルを読まず、時には存在を知らなかったり、マニュアルを無視するという。このため企業は、オンラインコミュニティの危険性について、積極的に従業員に伝えていくことが重要である。本稿は、情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「Social networking and reputational risk in the workplace」を意訳したものである。また、このトピックスは米国市場の調査にもとづくものである。なお、文中意見にわたる部分は私見である。

ソーシャルネットワーキングは危険

オンライン上のソーシャルネットワーキングの普及により、コミュニケーション、アイデアの共有、情報の発信の方法等が多様化している。この多様化したソーシャルネットワーキングの世界において、仕事とプライベートとの境界線が薄れてきている。新しいコミュニケーションツールが多くの機会を生み出す一方で、個人にとっては倫理上のジレンマとなり、企業にとってはブランドが危険にさらされる可能性がある。
動画や画像、意見、経験や観察記録などの文章をソーシャルネットワーキングのサイトに掲載することは個人的な判断によるが、その行動1つが、個人のみならず企業にとって大きな倫理上の問題につながる可能性がある。
ソーシャルネットワーキングのサイトにおいて個人が軽い気持ちで発信した情報が思わぬところで波紋をよび、社会的な問題に発展してしまうケースがたびたび見受けられる。
上記の問題を未然に防ぐためには、経営者はリスクとその影響を認識し、適切なコントロールを構築することが重要となる。

ソーシャルネットワーキングに関する企業の対策

それでは企業は、従業員のソーシャルネットワーキング上のコミュニケーションに対し、どのような対策を施せばよいのか。
従業員のソーシャルネットワーキングの利用に関する方針とマニュアルを作成することが1つの解決策となる。
しかしその一方で、デロイトの調査結果では、マニュアルを読まない、存在を知らない、又はマニュアルを無視する等の理由により、従業員の半分ほどしかその行動を変えることができないと分析している。このようなオンラインコミュニティでのレピュテーションリスクを軽減するためには、「企業の文化」、「企業の価値」、「倫理」を強調する必要がある。
すなわち、企業はソーシャルネットワーキングの利用に関する方針とマニュアルを作成するとともに、経営者がオンラインコミュニティの危険性について、積極的に従業員に伝えていくことが重要である。これらの重要性を強調することにより、ソーシャルネットワーキングでの環境においても最良の判断を促すことができる。

ソーシャルネットワーキングの利用に関する調査

以下の調査結果は、Deloitte LLPに代行してオピニオンリサーチ社が、アメリカに住む2,008人(男性1,000人、女性1,008人)の18歳以上の成人を対象に電話での調査、及び500人の会社役員を対象にオンライン上での調査を行った結果である(2009年実施)。

調査結果

ソーシャルネットワーキングに伴うレピュテーションリスクが存在する

Deloitte LLP の倫理と企業調査結果によると、「Facebook、TwitterやYouTubeなどのサイトを利用することにより、企業ブランドのレピュテーションが損なわれやすいと思うか」という問いに対し、調査対象であるアメリカ人就業者の74%が「非常にそう思う/そう思う」と答えており、ソーシャルネットワーキングに伴うレピュテーションリスクが存在することが分かる。

【図1】ソーシャルネットワーキングのサイトを利用することにより、企業ブランドのレピュテーションが損なわれやすいと思うか

ソーシャルネットワーキングのサイトを利用することにより、企業ブランドのレピュテーションが損なわれやすいと思うか

58%の企業役員がソーシャルネットワーキングは役員会の討論事項だと認識しているが、そのうち15%しか検討事項として扱っていない

従来、企業はレピュテーションリスクの問題に対し、従業員のオンライン上での行動は1つの自己表現であるという認識で取り組んできた。しかし、世界的なブランドが従業員のオンライン上での活動によりダメージを受けた事例もあり、この問題について、企業の管理者レベルでの話し合いが必要であることが分かる。
その一方で、調査対象となった経営者の58%が、ソーシャルネットワーキングを役員会における討論事項として取り上げる必要性があると認識しているにもかかわらず、そのうちの15%しか実際に行っていないことが分かった。

レピュテーションリスクに対するコントロールを構築している企業は17%程度である

また、「ソーシャルネットワーキングに関するリスクをどのように軽減しているか」という問いに対し、「ソーシャルネットワーキングの利用に伴う潜在的なレピュテーションリスクをモニターし、軽減するプログラムを採用している」と回答したのは、経営者の17%のみにとどまっている。

【図2】ソーシャルネットワーキングのリスクをどのように軽減しているか

ソーシャルネットワーキングのリスクをどのように軽減しているか

従業員は、オンライン上の活動についてどのように考えているのか

ソーシャルネットワーキングが進化していく中で、その利用方法やアクセスについて様々な見解がある。調査対象である役員の60%が、「従業員が自分やその会社についてオンライン上でどのように表現しているかを知る権利がある」と回答している。一方、従業員の53%が、「ソーシャルネットワーキングの内容は会社とは関係ない」と回答している。
それに対し役員の40%が「そう思わない」と回答しており、30%は「ソーシャルネットワーキングのサイトを非公式にモニターしている」と回答している。
また、従業員の61%は会社が自分達のソーシャルネットワーキングのプロファイルや活動をモニターしていようが、「オンライン上での活動を変える意思はない」と回答している。彼らはそれがプライベートなものではないと認識しており、既にオンラインのプロファイルを大幅に修正しているためである。

ソーシャルネットワーク利用に関する方針、マニュアル等により従業員の行動は変わるのか

では、企業はどうすればよいのか?方針とマニュアルを作成することが、1つの解決策となる。
しかし、調査結果によると、「企業の方針によってオンライン上での活動が変わるか」という問いに対し、従業員の40%が「いいえ」と回答しており、企業のガイドラインでは従業員の半数ほどしかサイバースペースでの行動を変えることができないと言える。
また、「ソーシャルネットワーキングのツールの利用に関する方針があるか」という問いに対し、従業員の24%が「分からない」と回答しており、企業の方針に対する従業員の認識も不十分であることを示している。

【図3】ソーシャルネットワーキングのツールの利用に関する方針があるか

ソーシャルネットワーキングのツールの利用に関する方針があるか

ソーシャルネットワーキングを利用する際に、倫理的な影響を考慮するか

「オンライン上でコメントしたり、写真や動画を掲載する際に倫理的な影響について考慮するか」という問いに対し、従業員の27%が「考慮していない」と回答している。
また、「上司が何と思うか考慮するか」という問いに対し、従業員の37%が「めったにしない/全くしない」と回答している。

【図4】上司が何と思うか考慮するか

上司が何と思うか考慮するか

「同僚が何と思うか考慮するか」という問いに対し、従業員の37%が「めったにしない/全くしない」と回答している。

【図5】同僚が何と思うか考慮するか

同僚が何と思うか考慮するか

「顧客が何と思うか考慮するか」という問いに対し、従業員の34%が「めったにしない/全くしない」と回答している。

【図6】顧客が何と思うか考慮するか

顧客が何と思うか考慮するか

ソーシャルネットワーキングの利用は従業員のよりよいワークライフバランスを構築する

「ソーシャルネットワーキングのサイトの利用が、従業員のより良いワークライフバランスを得ることに役立っているか」という問いに対し、役員の56%が「非常にそう思う/そう思う」と回答している。

【図7】ソーシャルネットワーキングのサイトの利用が、従業員のより良いワークライフバランスを得ることに役立っているか(役員に対する質問)

ソーシャルネットワーキングのサイトの利用が、従業員のより良いワークライフバランスを得ることに役立っているか(役員に対する質問)

一方で、同じ問いに対し「非常にそう思う/そう思う」と回答したのは、従業員の31%にとどまっている。

【図8】ソーシャルネットワーキングのサイトの利用が、従業員のより良いワークライフバランスを得ることに役立っているか(従業員に対する質問)

ソーシャルネットワーキングのサイトの利用が、従業員のより良いワークライフバランスを得ることに役立っているか(従業員に対する質問)

結論

上記の調査結果より、ソーシャルネットワーキングに対する考え方が経営者と従業員とで必ずしも一致していないことが分かる。よって、従業員のオンライン上での行動は自己表現であるという姿勢に対し、企業の方針やガイドラインだけでは従業員の半数ほどしかその行動に影響を与えることができないということが言える。従って、オンライン上のコミュニティでのレピュテーションリスクを軽減するためには、企業において、その文化、価値や倫理の重要性を強調していかなければならない。これらの重要性を強調することにより、ソーシャルネットワーキングでの環境においても最良の判断を促すことができる。

以上

(ご参照)
Thought Leadership ソーシャルネットワーキングとレピュテーションリスク デロイトアメリカの調査結果より(2)

 

 

 

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