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2007.12.13 ビジネスデューデリジェンスのポイント

著者: デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 マネジャー 熊谷 将 執筆

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1.ビジネスデューデリジェンスとは

ビジネスデューデリジェンス(DD)とは「対象事業(企業)が将来的にどの程度キャッシュフロー(CF)を産み出すか、特にそのリスクを精査すること」にあります。デューデリジェンスのフェーズでは、売却先の方針により、その期間や開示される情報の深度、対応のスピードが大きく変わるために、実施する前の段階で期間と対象事業の置かれた事業の環境や業界特性を踏まえて最適なスコープを設定する必要があります。つまり、買収・統合後の絵姿(出口戦略)を見据えた上で、特に買収価格に影響する論点を整理した上で精査のスコープを設定できるかが重要となります。

 

2.ビジネスデューデリジェンスの通常のアプローチ

ビジネスデューデリジェンスを行うアプローチとしては、対象事業の外部・内部環境調査を実施した上(Step1)で、現状および将来性を整理(SWOT分析が一般的)し(Step2)、改善の可能性を踏まえた各施策を検討した上で将来の計画(通常はPL・設備投資程度)を策定(Step3)もしくは売却サイドが策定した計画を検証します。

 

(Step1)外部・内部環境調査

外部・内部環境調査のフレームワークとしては3C(顧客:Customer、競合:Competitor、自社:Company)が一般的です。顧客分析では、市場規模・動向、規制状況、市場構造、顧客の購買動向などを分析し、市場の将来性を把握します。競合分析では、競合のプレイヤー数や動向、戦略の方向性などを分析し、今後対象事業が競争に勝ち抜く可能性を分析します。自社分析では過去の事業の業績のトレンドを把握した上で各指標の業界とのベンチマークとの比較分析や、自社の組織体制や機能の特性を分析することで、自社の強みや弱み(⇒改善点)を整理します。またストラテジックバイヤーの場合は自社とのシナジーの可能性も分析します。

 

(Step2)現状および将来性を整理(SWOT分析)

Step1で行った各分析より対象事業の現状をSWOT分析で整理します。特に強みおよび改善するポイントとなる弱みを十分に把握していないと、将来の方向性を決めることができません。

 

(Step3)将来の計画策定

将来の方向性を踏まえた上で、将来CFの改善(バリューアップ)余地を把握します。製品の事業ポートフォリオの変更やマーケティング戦略の再構築、新規製品の開発など売上改善施策と、工場の統廃合(ライン)や間接部門の効率化などコスト削減施策に分かれます。また買収後(統合後)の各種施策の実行状況を管理または将来の上場などの出口戦略を想定した上での管理基盤の整備などの施策も検討します。通常、コスト削減施策は大きな阻害要因(例えばリストラ余地がある場合の労務問題)がない限りは計算が立ちやすいですが、売上拡大余地は市場変動のリスクがあるため保守的に見積もります。特に自社とのシナジー効果を加算する場合には統合リスクを踏まえて保守的に実施します。
これらの各種バリューアップ施策を考慮して、改善版の将来計画を策定します。

3.最近のビジネスデューデリジェンスのトレンド

1)スコープの設定

上記のようなStep1~3を経てデューデリジェンスを実施するのが通常の流れですが、冒頭に申し上げたとおり、デューデリジェンスの期間および把握可能な情報は限定されているのが通常であり(特に入札案件の場合)、対象事業の置かれている事業環境および業界特性、および買収サイドの買収目的や出口戦略により、より効率的効果的にデューデリジェンスを実施するために、スコープを限定することが多くなっています。
例えば、市場が成熟し再編が活発な業界において買収・統合をする場合は自社とのシナジー、特にコストサイドの削減可能性を一番のポイントとし、そこを中心とした分析となります。また、買収対象が企業の1部門である場合にはスタンドアローンコストの算定(対象事業が独立することで負担すべきコスト)が一番のポイントとなります。
また、買収サイドがストラテジックバイヤー(同業)であり、かつ今後統合を検討する際には、統合によるシナジーもしくはリスクの検証が重要ですが、ファンドなどで将来的に数年後のIPOを方針としている場合にはIPOをするための管理基盤構築にどれくらいの期間・コストがかかるかが重要となります。
以降ではコスト削減施策の検討とスタンドアローンコストの算定について詳しく述べたいと思います。

また、買収サイドがストラテジックバイヤー(同業)であり、かつ今後統合を検討する際には、統合によるシナジーもしくはリスクの検証が重要ですが、ファンドなどで将来的に数年後のIPOを方針としている場合にはIPOをするための管理基盤構築にどれくらいの期間・コストがかかるかが重要となります。

以降ではコスト削減施策の検討とスタンドアローンコストの算定について詳しく述べたいと思います。

2)コスト削減施策の検討とスタンドアローンコストの算定

コスト削減施策の検討は、まず対象事業のコスト構造を整理し、ベンチマークとなる企業や業界平均と比較して、水準が高いコストは削減余地の可能性があると把握することから始まります。

この場合の基本となる指標は、コストの絶対値もしくは売上高比ですが、比較可能な限りにコストを分解していきます。例えば会社全体の売上高原価比率がスタートだとすると、売上高労務費、売上高経費というように費目レベルで分解したり、事業別や地域別などセグメント別にその比率を分解したりします。その対象事業において複数の工場を持つ場合には工場別のコスト、ライン別のコストというふうに細かく分解し、その要因となる重要業績達成指標(KPI)、例えば稼働率や歩留まり率などへ分解していきます。これらの指標(KPI)を自社の中での横比較をする場合もありますが、通常は業界の平均値もしくはベンチマークとなる企業(買収企業が同業の場合は自社の数値)との数値を比較します。ここで業界の平均値もしくはベンチマーク企業よりも指標が悪い場合は、コスト削減余地の可能性があるとし、悪い理由とその改善可能性を検証します。ポイントとしては、業務によってはコストを削減することで顧客へのサービスレベルを落とし売上が落ちることがあり、業界およびその会社の特性を把握した上で設計する必要があります。

スタンドアローンコストの算出とは、対象事業が独立した会社としての機能を有するために必要なコストを試算することです。通常、事業や会社がグループ内に属している場合、会社の機能の一部を親会社やグループ会社に依存したり、共通化することでスケールメリット活かしてコスト削減していることが多いです(例えば間接部門や仕入・物流部門など)。そのため、買収後の独立会社として考えた場合はコスト増要因であり買収金額の交渉の重要な要因となるため、その状況および金額を把握することが必要です。

通常は対象事業において、一般的な独立会社として有すべき機能・インフラを保持しているかもしくはグループ全体で共有しているかどうかを確認していくことから始め、業界の特性や事業規模を踏まえた上で、今後独立会社として必要なコストを試算します。コストの算出としては、詳細にコスト金額を計算するよりも金額の大きな項目(リスク)の漏れがないように進めることが重要です。例えばITインフラに関してはグループで共通の仕組みをとっていることが多く金額も大きいため、ITシステムデューデリジェンスとして別途詳細に把握する場合もあります。

 

4.まとめ

ビジネスデューデリジェンスは今後のM&Aの成功(買収の可否だけでなく、成果が残せるか)に大きく関わります。繰り返しにはなりますが、M&Aの目的や出口戦略に応じて効率的・効果的に実施するようにしてください。

以上