2007.10.17 M&A戦略の策定とターゲットの選定 |
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M&A戦略の策定プロセス
M&A検討の初期段階において重要なことは、M&Aの目的をどのように位置づけるかということです。なぜなら、M&Aは経営目的達成の手段であって、それ自体がゴールではないからです。M&Aを行う目的とは、端的に言えば、他社を買収することにより自社の不足している機能や経営資源を短期間で補完する、ということになるのでしょうが、実際にはそこへ行きつくために様々な思考の過程が介在します。企業が本来的に目指したいハイレベルな目標の定義からスタートして、それを実現するための施策を立案し、外的な環境要因や時間的制約、数的シミュレーションなどを詳細に検討してはじめて、自社にとって最も適切なソリューションがM&Aであるということが合理的な形で明確になるのです。そのようなM&A戦略の検討は、例えば以下のようなステップにより行われます。
(Step1) 現状の分析/共有
自社の「ありたい姿」を定義するため、自社の戦略を制限する可能性が高い内的・外的要因をハイレベルな視点から洗い出す。
(Step2) 「ありたい姿」の定義
Step1の結果をベースに「ありたい姿」をより具体的に定義するために、現状と将来の目標(事業価値と実現スケジュール)を設定する。
(Step3) 「とるべき施策」の抽出
Step2で定義した目標(事業価値)の達成を実現するための施策をゼロベースの視点で定義する。(施策はバリューチェーンや機能別等に定義し、目指すM&&Aをより具体化する)
(Step4) 「とるべき施策」の優先順位付け、ロードマップ化
施策について複数の視点から優先順位を付けるとともに、「ありたい姿」を実現するために最短と考えられるロードマップをハイレベル視点とボトム視点をあわせて策定する。 (Step5) 目指すM&Aの定義
ロードマップをベースに、目指すM&Aを具体的に定義するとともに、M&Aによって実現される事業価値向上をシミュレーションし、M&A実施の意義を明確にする。(必要に応じて、この段階でスクリーニングも開始)
以上のような検討を経てはじめて、実際のM&A案件について自社の目指すべき方向性にとってプラスとなるのかという点について判断ができ、案件を取捨選択していくということが可能になるのです。つまり、ここで検討したM&A戦略は、その後のスクリーニングを行っていく上での重要な基礎材料となるのです。
ターゲットスクリーニングの考え方と手法
M&A戦略が明確になった後のステップとして、「ターゲットスクリーニング」があります。これはM&A戦略を実行に移しその目的を達成するために、実際に買収対象として考えられるターゲットはどこかということを明確化するプロセスです。もちろん、実際のM&A案件においては、金融機関等を通じて突然舞い込んでくる案件や再生案件などに多く見られる公開入札による案件も多くあり、このようなスクリーニング作業に時間をかけられないというケースも多々あります。しかしながら、ここでは相対取引を前提として、ある程度の時間的余裕があり、十分なスクリーニングを行った後に次のアクションを起こすというケースを想定することとします。スクリーニングを効果的なものとするためには、前述のM&A戦略策定の部分で述べた自社の「ありたい姿」と現状の経営資源、各バリューチェーンの強み・弱み等を比較して、補完しなければいけない資源・機能等を特定した上でそれに合致するような案件を選択する必要があります。
具体的な例をいくつか挙げてみましょう。
「特定地域での販売が伸びずテコ入れが課題」(不足領域補完の例)
⇒当該地域を地盤とした、あるいは営業拠点や代理店網を持った企業
「特定工程や部品等の仕入/外注費の原価が高く、コスト競争力がない」(川上への展開の例)
⇒当該工程(機械設備、技術者)の生産能力を保有した企業
「自社物流部門だけでは在庫保管、配送等のキャパシティをオーバー」(現状機能強化の例)
⇒自社のニーズを満たす規模の物流設備やネットワークを保有した企業
このように、企業が直面する課題を解決するために有用な資源・機能等を保有している対象か否かという視点はスクリーニングを行う上では重要であり、弊社ではそれらを具体的なリストとして洗い出すために、次の3ステップによるスクリーニングを行っています(図参照)。
図: ターゲットスクリーニングの考え方とステップ

スクリーニングを行うにあたっては、自社の目指すべき事業ポートフォリオとの整合性を考える必要があります。複数の事業を抱えているような企業の場合は、そこで強化しようとしている事業ドメインに属するターゲットでなければ検討する意味がありません。したがって、まず多くの企業リストの中から、当該事業セクターに属する企業の洗い出しを行うことがファーストステップとなります。ここで用いる企業リストとは、上場企業等を中心にある程度の情報が入手できる企業を幅広くリスト化したものを活用することが望ましいと考えられます。自社のリソースを用いて行う場合には、契約している企業情報サービス会社のデータベースや、会社四季報(CD-ROM)等、比較的アクセスしやすいものをベースに作成することが現実的です。一方、スクリーニングを外部機関(投資銀行、証券会社、コンサルティングファーム等)に委託して実施するということも一般に行われており、その場合は外部の専門機関に蓄積されたデータベースや独自の情報ネットワークを通じて収集した情報をリスト化するため、より多くの可能性を探ることが期待できます。
次に、そのデータベース等に集計した企業につき、自社の競争戦略との適合性を検討します。すなわち、自社が強化したいリソースや機能を保有しているかどうかを判断するのです。これを見るためには、当該企業の有価証券報告書やその他のIR資料、新聞・雑誌記事やウェブサイト等の情報を集めます。当然ほしい情報が全て手に入らないケースが多いですが、公開情報でも大まかなことは把握できる傾向にあります。こうして該当する企業を絞り込んでいったものが「ロングリスト」となります。
さらに、ロングリストの中から当該リソースや機能に優位性があるかということや買収できる可能性があるかということを評価して、「ショートリスト」を作成します。ショートリストを作成するにあたっては、手に入れたいリソースや機能を公開情報等により入手し分析するとともに、業界の有識者や自社の営業担当者(取引先の場合)等に、M&Aの検討をしているということが分からないよう細心の注意を払った上でアクセスし、生の情報を入手するというケースもあります。特に経営者の資質や企業の組織風土等の面に関しては、一般に公開されている情報だけでは不足しているケースが多く、このような生の情報が非常に参考になることもあります。
前述のような過程を経てショートリストが作成されることにより、ようやくアクセスする対象が明確になります。この先には、ファイナンシャルアドバイザリー(FA)を起用して交渉のステージに進むというのが一般的ですが、当然のことながら、それ以上の話がうまく進むとは限らないので、万が一不調に終わる場合は、また検討プロセスに立ち返って再度検討を行うということも往々にしてありえます。M&Aの実行は言ってみれば当事者同士の交渉の結果であり、成功が保証されているものではもちろんないですが、このようなスクリーニングの手順をきちんと踏むことにとり、その後のデューデリジェンスを行った結果ミスチョイスであることが判明するといった、時間とコストの無駄な消費をできるだけ避けるという効果も得られる可能性があります。そしてこれ以降は、ターゲットへのアクセス段階に入るわけですが、その点については、次回以降に記載させていただきたいと思います。
以上

