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事業売却 3. 売り時を見極める

著者: デロイト トーマツ FAS株式会社 リオーガニゼーションサービス

事業売却の重要性を理解し、売却に対する心構えができたならば、次に事業の売り時の見極め方について考えたい。
 
通常の製品やサービスであっても売り時が肝心である。クリスマスケーキを例に考えてみよう。クリスマスケーキは12月25日を過ぎると売れない。もしくは、どうしても売りたいのならば、大幅な値引きが必要となることは周知の通り。製品やサービスには旬があり、旬を逃すと多額の利益を逸することになる。
 
この点は、事業であっても同じである。事業の売り時を誤ると痛い目に合う。
 
ここで、事業の売却価格の決まり方を考えてみよう。
 
例えば、業績好調な事業は、高値での売却が予想される。また、今は赤字でも将来の成長が見込まれる事業も、高値で取引されうるだろう。このことが示唆するのは、事業の売却価格は今現在の収益力のみならず、将来の成長性を根拠に決められているということである。
 
また、他の要素として、売却企業が価格をコントロールする力を持っている場合も、高値で売却できる可能性が高い。その事業を欲しがっている候補者が複数いる場合や希望価格がつかなければ、売却企業が売却しないことを選択できる場合がそれに該当する。再生案件のように、企業の存続のために必ず事業を売らなくてはいけない事情が売却企業にあると、買収企業が足元を見てくるため、高値が付きにくいことはご想像いただけるであろう。
 
すなわち、事業の売り時を見極めるには、売却事業の将来の収益力・成長性と全社的な余裕を合わせて考える必要がある。
 
「今は好調でも、5年後には成長の鈍化が予想される」「引き続き成長が見込まれる事業ではあるが、コア事業への貢献が期待できない」
そのような事業は、売却を検討する必要がある。事業の売り時を誤らないように、十分かつ慎重に検討すべきである。
 
そして、事業売却を実行するまでに、経済的、時間的余裕があれば、交渉の材料や選択肢を複数用意できることを忘れてはならない。米GMが自社のブランドを切り分けて売却している姿を見て、「この事業売却はGMが主導権を持って行っている」と思う人がどれほどいるであろうか。
 
将来の事は誰にも分からない。しかし、売り時の見極めには、事業の将来性に加えて、グループ全体の経営戦略や競合他社の状況、経済環境などを総合的に勘案する必要がある。大局的な視野が必要であり、非常に高度な判断である。この判断を下せるのは、経営者のみであり、このような高度な判断を下すことこそが経営者の仕事ではないだろうか。事業の売却価格の最大化を可能にするのは、経営者の勇気ある決断に他ならない。

No 項目 売り時の事業 売り時を逃してしまった事業 
1 収益性 業績は好調である 業績不振にあえいでいる

2 成長性 5年後、10年後には成長の鈍化が予想される すでに成長の鈍化が始まっている

3 競争環境 多くの企業が参入し、競争が激化している 競争が激化している、もしくは、競争に耐え切れず、撤退する企業が現れている

4 自社の優位性 数年前まであった優位性(技術特性やブランド力)が薄れつつある 優位性として挙げられる特長がない

5 株主・債権者 株主・債権者から、事業売却の圧力はほとんどない 株主・債権者から、事業売却の圧力を受けている

6 時間的余裕 時間的余裕がある 時間的余裕がない

7 売却中止の可否 買収候補企業との条件が合わなければ、事業売却を中止できる 買収候補企業が限定的であり、いずれかの候補先には売却しなければならない

 


※本文中の意見に関する部分は私見であり、法人の公式な見解ではない旨申し添える。


以上

▲ 事業売却~売り手企業の視点からM&Aを考える~
▲ 1. 勝ち組企業は事業を売っている    ▲ 2. 事業売却で会社は成長する 
▲ 4. 売却先で再び輝く       ▲ 5. 事例でみる事業売却  

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